WORKS設計・デザインの実績
Concept
「スケールアウトの開放感」
首都圏郊外の少々寂れた駅前に建つ、新築の焼き鳥屋である。
施主は東京・高円寺で焼き鳥屋を営んでいたが、故郷で林業に携わりたいとの思いからUターンして木こりとしての修行を始め、一人前となったこれからは平日(月〜木)は木こり/週末(金・土)は焼き鳥屋という、二足の草鞋で働くことを目指した。
敷地はスナックや居酒屋が立ち並ぶ一角にあり、間口4.8m×奥行20mの路地状敷地である。ここに、地場材である西川材(主に杉・桧)を使って、華美でなく洗練された店舗を、また計画道路のために2.5mのセットバックが必要なため周囲の街並みに埋もれないファサードを求められた。
そこで、道路へ向かって上端側が大きくせり出すような片流れの屋根をかけ大きな軒下を作り、みちの延長として人を引き込むような構成とし、ファサードはその屋根の下に大きな開口を設けることで、店内の灯りが軒下に大きな光溜まりを作り、道路から見上げると屋根の木組みが目立つことで、看板のような役割を果たしている。
この正面の門型フレームは大きい開口部を確保するべく、部分的に木造ラーメンで固めている。大きくせり出した軒は1本の中央の柱で受け、この柱が建築の象徴となるよう足元は特殊なホールダウン金物で納めた。
内部空間は天井高を最大で4mとし、3.4mの間口に対してタテ方向の感覚をスケールアウトさせる造りとすることでオープンエアの路地のような開放感を得られないか、また屋台のように入れ子状になった厨房を囲んでいる、コの字型のカウンターを低く設定することで、顔見知りの常連客同士で大きな1つのテーブルを囲んでいるかのような、会話が弾むような距離感を実現している。あたかも屋台脇の路地や広場でわいわい飲んでいるような、まちの延長の様な空間を目指した。
またこの建築に使われている桧の柱は「はしらベンチ」を実際に使った建築第一号である。
Photo
Data
- 用途:飲食店舗
- 敷地:埼玉県飯能市東町
- 面積:44.86m²
- 施工:株式会社矢島工務店
- 竣工:2019年12月
- 撮影:畑 拓
- 設計:双木 洋介